紫泥剣古鏡縁雲脚長方

今から半世紀程前、古渡名器・中渡鉢を生んだ“陶都“ 中国宜興において、“失われた名器と名胎“の再現に挑んだ陶家達がいました。人民服を着て、いまだ国営の窯場しかない中、自身の作品のみに生き甲斐を求める人達、そこに経済発展を遂げて、海を渡り、盆栽界に新たなる名器をもたらそうとした日本の盆栽家達が集いました。
今でこそ、宜興が生んだ天然の“紫砂“は、特別な立場の陶家だけが使用できるものになっていますが、当時は建築資材にまで使用されるものでした。
しかし、名器の再現となると、洗練された陶土を作れる歴史すら消えた中国。これを再現するのに数年の時を要しました。
“名木に使える盆器を“の合言葉で、数々の盆器が1点造りで、陶家の手で製作されました。
本器も剣古鏡の実用名器として、数点が日本に届いたものです。
中渡と判別出来ないほどの土味、肉厚の重厚な造り、現在では製作不可能と言える陶土の質。日本盆栽界で実用の時を重ねて、その“紫砂“紫泥は、深い味わいを帯びるに至りました。保存状態も良く、ここから真の名器としての再評価が高まる逸品です。