
数少ない藤もどきの古盆です。薄紫の儚き美しさを見せるこの盆栽は、幽玄な花物盆栽飾りとして数寄心豊かな栽家に人気の高い種です。
戦後の渡来種として栽界に登場した藤もどきは、過去にも国風展を彩る名樹が記憶されていますが、ある程度の持ち込みを重ねると、
次第に衰弱し“藤もどきに名樹なし”という言葉さえ伝えられています。培養技術的に未だ解明できないところもありますが、
今回ご紹介する樹はその藤もどきに情熱を注ぎ、誰もがその作出に遠ざかる中、ひたすらに愛培を続けた奈良県斑鳩調布園、塚本翁の労作です。
数年前、塚本翁の病により、今後の作出は難しいとされる中、小店にてその古作のすべてを買い取るに至りました。
今回ご紹介する一樹は、その中でも最も樹齢が古い部類に属するもので、立ち上がり部分に僅かなヤケサバがありますが、健康状態は申し分なしといえるものです。
翁如く、「藤もどきは根をあまり傷めない植替えが肝要」との言。数年に一度の植え替えの時は、他の雑木盆栽とは異なり、
1~2割の根ほどきに抑えてひと回り鉢を大きくすることが良いと思われます。命短き中に咲く花、盆栽の中に潜む永遠ともいえる“刹那の美”を藤もどきは感じさせてくれます。
おそらく栽界に於て現存最古といえる藤もどきをご紹介します。
撮影日2018年4月2日