信楽呑平瑠璃釉切立長方水盤

今から約50年前、“幻の呑平の研究と再現“ という、不可能と言われた挑戦が、大宮盆栽村長老、村田九霞園、村田九造翁の主導の下，岐阜窯業試験場の技師達によって、苦難の実技が行われました。明治期に作陶された「呑平」は、正式な作者も判らず、宮内省出入り方であった、“木部苔香園師に見出された陶工への発注“という、ごく僅かな風伝のみで、現在まで伝承されてきました。
底面の足裏まで施された釉薬、それでいて紙一枚すら入らない完璧な焼成。当時の技術では解明できない陶技を、九霞園翁達は、私財を叩いて研究しました。
結果は、どれ程に技術的な考察を重ねても判らないまま、この挑戦は終わりました。
後に退官した技術者達が、“せっかくここまでの研究をして出来た内容を世に遺したい“と言う思いから、この呑平写しの水盤が、僅かな数、市井に残されました。

本作はその中でも、傑出した出来栄えと“割寸法“を備えた逸品です。
釉薬、釉留め、間寸法、どれを取っても、“名器呑平“  と寸分違わぬものです。
奥行きを“黄金分割“で割り出したような対比。
「名石、名器と相和す」と諺が、ピッタリと合う、“未来の名水盤”をご紹介します。